北村浩子の「読んで、話して、書いて」

フリーアナウンサー、ライター、日本語教師の北村浩子のブログです。

「北村浩子のbook on」スタートです

「book off」じゃなくて……

 

というくらいのかるい気持ちで、

「book on」とつけました。

前口上からお読みいただければ幸いです。

 

北村浩子の「book on」

 

今回は、3本アップしました。

 

『最愛の子ども』(松浦理英子著 文藝春秋

『ちいさい言語学者の冒険』(広瀬友紀著 岩波書店

『私なりに絶景』(宮田珠己著 廣済堂出版

 

1本100円です。
それぞれ、冒頭の約30秒は無料でお聴きいただけます。

 

本を買ったり、原稿を書いたり、
いろいろなひとの力もお借りしている関係で、
無料にすることはできませんでした。

ごめんなさい。

もし、たくさんの方にダウンロードしていただけたら、
これからも続けたいと思います。

 

どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

 

 

話します!(ひさしぶりに)

久しぶりに話します。

 

7月20日(木)19時から、大手町で読書の話をします。

参加費は500円です。

どなたでも参加可能です。

お仕事帰りにお寄りいただけたらうれしいです!

PASONA講座・イベント

 

久しぶりだ……声出るかな……

 

コラムやレビューや講座など

あらためまして『ヒロ☆コラム』プレゼントに

たくさんのご応募をいただき、

ほんとうにありがとうございました!

 

当選された方には、今週末にはお送りいたします。

もう少しお待ちください。

 

今日はこれからの予定を。

 

ちょっとお休みしていましたシミルボンの連載、

書評コラムというかたちでぼちぼち書いていきます。

もし気に入っていただけましたら

「いいね」を押していただけたら幸いです。

shimirubon.jp

5月10日発売の「本の雑誌」で、

最果タヒさん、川上弘美さん、星野源さんの新刊をご紹介しています。

今月の本の雑誌|WEB本の雑誌

 

また、5月17日発売の「小説すばる6月号」(集英社)に、

「宇宙をめぐる物語」と題したブックレビューが掲載されます。

長めのものを文芸誌に書かせていただいたのは初めてです。

がんばって書きました!

 

そして、まだ日時は固まっていないのですが、

7月半ばに、パソナ主催の、

読書がテーマの講座を担当します。

お手頃な料金(500円くらい)になる……と思います。

平日の夜、都内での開催になります。

詳細が決まりましたらこちらでもお知らせします。

 

 そして!

できれば来月あたりから、

「books A to Z」のような、音声の配信を

始めたいと思っています。

 

どうでしょう?

楽しみにしていただけるでしょうか……?

よりぬき「books A to Z」 『黒い天使』(コーネル・ウールリッチ 黒原敏行 ハヤカワ・ミステリ文庫)

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今回は、コーネル・ウールリッチ

『黒い天使』をご紹介します。

翻訳は黒原敏行さん。

ハヤカワ・ミステリ文庫からでています。

youtu.be

 コーネル・ウールリッチという作家は、

この本名を含めて、

幾つかの名前を使って小説を発表した人です。

その中でも有名なのは、『幻の女』という作品。

ウィリアム・アイリッシュという名前で発表されています。

『幻の女』は、ある場面で、

「ええっ!?」と

声が出てしまったことを覚えています。

読んでいたときの興奮が忘れられない小説ですが、

今日ご紹介する『黒い天使』は、

ウールリッチ名義で発表された中でも人気の一作。

これはまた、違った魅力がありました。

 

語り手は、22歳のアルバータという女性。

彼女は愛する夫と2人で暮らしていた。

夫はアルバータに、

天使の顔、エンジェルズ・フェイス、と

よく囁いてくれた。

しかしだんだん彼の帰りは遅くなり、

見え透いた言い訳をするようになった。

ミア、と名が彫られたコンパクトが

彼のコートのポケットから出てきたことがある。

ミアというその女性が、舞台女優であることを、

アルバータは知っていました。

 

不安がさらに濃くなったのは、

スーツが2着、クローゼットからなくなり、

旅行鞄が重いのに気付いたときだった。

会社に電話をすると、

出張の予定はないという。

夫は駆け落ちしようとしているのだ……

と思ったアルバータ

意を決して、ミアのところへ出向きます。

 

ニューヨークの高級住宅街の、高級なアパートメント。

ベルを鳴らしたけれど、誰も出ない。

ドアにはかぎが掛かっていなかった。

中へ入る。

お金をかけた家具が眼に入ってくる。

電話のベルが鳴った。

思わず受話器を取ると、

聞こえてきたのは馴染みのある声でした。

「──もしもし、ミア?」

疑いは確信となってしまった。

アルバータはふらふらと玄関へ向かいます。

何かに躓いた。

足だ。

足? 

 

ミアと思われる女性は、

枕に顔を押しつけられて、死亡していた。

あまりの恐怖に駆け出した瞬間、

アルバータの頭に、夫のことが浮かびました。

夫と彼女との関係を疑わせるものを、

この部屋から持ち去っておかなきゃ……!

アルバータは、電話帳を掴んでバッグに入れ、

ドアの外に人がいないか、耳を澄ませた。

そのとき、ドアの蝶つがいのあたりに、

紙マッチの、ボール紙の部分を半分にちぎったものが、

挟まれているのに気付きました。

M、とイニシャルが書いてある。

アルバータはそれもバッグに入れた。

細心の注意を払って家まで戻り、

ひといきついたところで、

アルバータはハッとしました。

夫がミアの部屋に行ったら、

大変なことになる。

慌てて会社に電話をかけると、

夫はもう退社していた。どうしよう!

不安は的中、夫は逮捕された。

「私、あの部屋に行ったんです。

女性は死んでいました。

でもそのとき、夫は会社にいたんです!」

警察に、アルバータは懸命に訴えましたが、

聞いてもらえなかった。

ミアの死亡推定時刻は、午後1時から2時くらい。

夫は、2時15分頃に、

アパートを出るところを見られていたのだった。

夫の言い分は、

アパートへは行ったが、

彼女は留守で部屋には入れなかった、というものでした。

彼は、あらゆる面からみて、不利だった。

起訴され、裁判にかけられ、死刑を宣告された。

面会で夫は、アルバータに、

「信じてもらえないだろうが、

あの日、アパートに行ったのは、

彼女と別れるためだったんだ。本当だよ」と言った。

信じてるわ、と彼女は返した。

夫を取り戻すことを、

アルバータは心に決めていました。

 

あのマッチ。M。

単純なやり方だけれど、

イニシャルがMの人物を、電話帳からあたってみよう。

「M」は4人いた。

アルバータは彼らに連絡を取り、

彼らに近づきました。

ひとりは浮浪者、

ひとりは医者、

ひとりは青年実業家、

そしてもうひとりは、ダンスクラブの支配人。

その中の一人に、

アルバータは思いがけず、心惹かれてしまうのです……

 

ミステリーではありますが、

推理の手がかりがちりばめられているというより、

アルバータの冒険を描いた物語、という感じです。

怖い思いをしながらも、

健気に、懸命に頭を働かせて、

犯人かもしれない男たちから

ミアとの関係をさりげなく聞きだし、

夫の無実を証明しようとする。

警察に、無駄だからやめなさいと言われても、

「正しい答えが見つかるまでは間違いが続くけれど、

最後に答えが見つかったら、

それまでの間違いは全部帳消しになる」

と主張して、果敢に挑んでいくんですね。

エンジェルズ・フェイス、という、

夫が彼女に言っていた言葉が何度か出てきますが、

これが、ラストシーンで、

とても切なく、読者の胸に響きます。

 

今日は、コーネル・ウールリッチ

『黒い天使』をご紹介しました。

ご応募ありがとうございました!

『ヒロ☆コラム』プレゼントへのご応募、

思いがけずたくさんの方からいただきました。

みなさん、ありがとうございます……!

メールを下さった全てのかたが、

温かいメッセージを添えて下さっていて、

とてもとても嬉しく読ませていただきました。

3冊しかないのが残念なので、

GWに実家に帰って、

どこかに何冊か隠れていないか、

ちょっくら見てこようと思います。

 

数年前、紀伊國屋書店さんで

トークイベントを開催させていただいたとき、

「books A to Z」オリジナルの栞を作ったのですが、

そちらも一緒に送らせていただきます。

 

来月上旬には発送いたします。

もうすこしお待ちください。

 

 

 

 

 

『ヒロ☆コラム』プレゼントします

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「キタムラさん、何か書いてみない?」と、

FMヨコハマのサイト制作を担当していた

Yさんが声をかけてくれたのは、

2000年の冬でした。

「なんかよく本読んでるから、

書くことも好きだと思って」と。

 

「ヒロコのコラムだからヒロコラム」

深く考えずにタイトルをつけ、

連載をはじめました。

毎週水曜日掲載。

2005年の8月まで、271回書きました。

 

その8月に、日本文化出版の編集者Ⅿさんが、

「本にしませんか?」と声をかけてくださり、

12月にはほんとうに本になりました。

 

「素顔のようなもの」というサブタイトル、

今もとても気に入っています。

 

棚の奥に何冊か、まだきれいな状態で残っていました。

読んでみたいと思って下さる方がいらっしゃいましたら、

差し上げます。3冊あります。

 

kitamurabooksatoz@gmail.com まで

メールをお寄せください。

(個人情報は送付するとき以外は使いません)

 

30代の自分は幸せだったなあ、と今、

思っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

よりぬきbooks A to Z 『守備の極意』(チャド・ハーバック著 土屋政雄訳 早川書房)

今回ご紹介するのは『守備の極意』。

著者はアメリカの作家、チャド・ハーバック、

翻訳は土屋政雄さんです。

早川書房から上下巻で出ています。

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著者のハーバックは、この『守備の極意』がデビュー作、

9年かけて書いたのだそうです。

2011年に刊行され、

ニューヨーク・タイムズの年間ベストにも入った作品ですが、

上巻を読んでいる途中から、

下巻があるのが嬉しくなってしまう、

そんな小説でした。

 

ウィスコンシン州ウェスティッシュ大学、

野球部のキャッチャー・マイク・シュウォーツが、

ある選手を見出すところから始まります。

対戦したサウスダコタ州の小さなチームの、

小さな選手。

高校生だというけれど、

14,5歳くらいにしかみえない。

でも、ショートを守る彼、ヘンリーの守備はすばらしかった。

第一歩がすごい。

瞬時にボールに追いつき、送球する、

その動作にひとつの無駄もない。

巻き戻して、もう一度見たいと思うくらいに、

彼の動きは優美で完璧だった。

マイクのチーム、

ウェティッシュ大学の野球部・ハープーナズは、

ここ数年、芳しくない弱小チーム。

マイクはヘンリーをスカウトします。

 

ヘンリーはびっくりした。

見栄えのしない体格の自分が、

まさか大学の野球部に声をかけられるなんて……。

夜行バスに乗ったヘンリーは、

これまで何度読んだか分からない愛読書

『守備の極意』をひらいた。

その本の著者は、セントルイス・カージナルス

18シーズンショートを守った、

最高の遊撃手、アパリシオ・ロドリゲス。

アパリシオはヘンリーの英雄だった。

いつか、彼のようになりたい……

それはヘンリーの夢でした。

大学の寮で、彼のルームメイトになったのは、

黒人のオーエンだった。

「ゲイのアフリカ人」だというオーエンの本棚にも、

『守備の極意』があった。

美意識の高いオーエンの部屋は、

彼の審美眼にかなったものだけで埋め尽くされていて、

ヘンリーはこれまでに味わったことのない空気感の中で

生活することになりました。

オーエンはカッコよかった。

ヘンリーに洒落たジーンズを買ってくれた。

野球部のテスト練習が始まり、選ばれたメンバー4人の中に、

ヘンリーもオーエンも入っていました。

 

オーエンは、試合に出られなくても気にしない。

ベンチにいるとき、

読書用のライトを帽子にクリップで止めて本を読む。

そんなことが許されているのは彼だけでしたが、

一方でヘンリーは、弱点だった打撃の強化に励み、

早朝から、自分をスカウトしてくれたマイクとともに

トレーニングに励んだ。

1年目。

ヘンリーはエリアのリーグの代表選手に選ばれ、

31試合に出てエラーゼロ。

2年目が終わる頃には、

ヘンリーは大学創設以来初めての

プロ候補になっていました。

打率は5割以上。

しかも、なんと、憧れのアパリシオの持つ、

全米大学競技協会、NCAA連続無失策記録に

あと1と迫っていました。

 

──その日、

ヘンリーがアパリシオの記録に並ぶところを見ようと、

球場にはプロのスカウトが2人、やって来ていた。

ヘンリーは2塁打を2本打っていた。打撃好調。

そして9回裏の守備。1アウト。ショートゴロ。

ヘンリーは自然に球をグラブに入れ、

その球は素早く、狙い通りの進路を辿った。

 

進路を邪魔したのは、湖からの一瞬の突風でした。

一塁手が飛びつく。

グラブの先端をボールは飛んでゆき、

ハープーナズのダッグアウトに入った。

どさっと倒れる音。

マイクの顔がゆがむ。

ヘンリーは驚きのあまり表情が作れない。

ボールは、本を読んでいたオーエンの顔を直撃した。

マイク、コーチ、大学の学長、

審判たちがオーエンに駆け寄る。

ヘンリーは震えが止まりませんでした。

この1球は、ヘンリーだけでなく、

そして彼の周りの人たちの人生をも、

変える1球になってしまったのです──。

 

野球の話、だけではない、

実はこの作品は、

大学のキャンパスを舞台にした群像劇で、

ヘンリー、マイク、オーエンに、

大学の学長アフェンライト、彼の娘ペラが絡んでいきます。

意外な組み合わせの恋愛。

ヘンリーの苦悩。

予想もしなかった濃厚なストーリーが

このあと展開されるんですが、

私が感じたキーワードは「湖」です。

さっき、湖からの突風で……と言いましたが、

物語の要所要所に「湖」が出てきます。

最後の「湖」の場面は、たまりませんでしたね。

長さが嬉しくなってしまう長篇です。

 

今日はチャド・ハーバック著『守備の極意』をご紹介しました。

早川書房から出ています。